目的・必要性|法学教員・研究者の養成に興味をもたれたら、京都大学大学院法学研究科へ

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事業の目的・必要性

目的・目標

目的・目標

法科大学院設置と並行して、将来的には実定法学の教育・研究は基本的に法曹資格を得た者(つまりは法科大学院修了者)が中心となって担うという制度選択が行われた。 それに伴って、実定法学研究者養成は、従前の研究者養成型修士課程ではなく、法科大学院を経由して法学研究科博士後期課程に進学する形が標準とされ、受験指導もその前提で行われるようになった。 しかし、実際に制度を動かしてみると、予想に反して、法科大学院修了後に博士後期課程に進学する者は殆ど現れなかった。 それは、法科大学院を経由して実務と理論の双方に精通した実定法学教員・実定法学研究者を養成するという意図は正しかったが、 個々の学生に対して取られるべき配慮のいくつかが必ずしも充分ではなかったことによるものと考えられる。

本事業は、京都大学法学研究科に実務と理論の双方に精通した新しい形の実定法学後継者(法科大学院教員)の全国的な養成拠点を全国で初めて形成するためのスタートアップ事業である。 具体的には、本事業年度の間、実定法学の教育研究者となるだけの十分な意欲と能力を持つ法科大学院修了者に対して研究に専念できる環境を提供すると同時に、博士後期課程の教育内容を練り直し、 博士論文完成に至る強力な支援策に基づいた道筋を明示することにより、博士後期課程進学者数の飛躍的増大を実現し、法科大学院を経由して実定法学の教育研究者を養成する道筋の実現可能性を検証する。

それは視点を変えれば、専門職大学院と既存の博士課程の有機的な結合のあり方の模索の一つであり、 また、中央教育審議会答申「新時代の大学院教育−国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて−」(平成17年9月5日)を踏まえ、 既存の博士課程が、我が国の実定法学の将来を担う研究者の養成・確保を図ることを目的として、実務面と研究面の双方に本格的に関与できる法科大学院教員という 新たな高度専門職業人の養成に乗り出す試みとも言える。


必要性・緊急性

必要性・緊急性01

「司法制度改革審議会意見書−21世紀の日本を支える司法制度−」(平成13年6月12日)は、法科大学院で法曹を養成することを提言すると同時に、 その法科大学院の教員についても「将来的に、少なくとも実定法科目の担当者については、法曹資格を持つことが期待される」という提言を行った。
それは、直接的には将来の法科大学院の実定法教員はやがて作られる法科大学院を経て法曹資格を得た者から採用するという宣言に過ぎないが、 実定法教員のポストの半ばが実際には法科大学院に置かれることを考えれば、実定法学教員たらんことを目指す研究者はまずは須く法科大学院を経ておくべきであるということを含意した。

もちろん、法科大学院教育を終えただけでは研究者教員となる能力は得られない。また実務家と手を携えて「理論と実務の架橋」を果たすためにも、 研究者教員の理論能力はより高いものでなければならない。
そこから自ずと、研究者教員の志望者達は法科大学院修了後に大学院博士後期3年の課程に進学し、 そこで博士の学位を取得してから教職・研究職に就くというコースが導かれる。
かくして、それまで実定法学研究者の養成に実績がある全国の法学研究科の殆どが、 これ以後、実定法学の研究者を志望する学部卒業生に対して、従前の研究型の修士課程ではなく法科大学院を受験するようにという指導を行うことになる。
本研究科も、平成16年度以降の修士課程募集要項は「法律学の研究者を目指す者は、研究志望科目(例えば、法史・国際法)や研究計画書の内容により 必ずしも法科大学院を経る必要がないとみられる場合を除き、法科大学院の教育課程を経ることが望ましい」としている。


必要性・緊急性02

ところが、法科大学院修了者が陸続と現れた後に明らかになったことは、法科大学院を修了後に大学院後期3年の課程に進学する者は実際には全国的に皆無に近いという現実であった。
法科大学院修了者が現れて以来5年間の実績を見てみると、従前より研究者養成実績がある11大学院(東北、東京、一橋、早稲田、慶応、名古屋、京都、大阪、大阪市立、神戸、九州大)のすべてを合わせても、 法科大学院修了後に後期課程に進学した者の数は1年当たり総計8名ほどであり、直ちに助教として採用された者を含めても後継者予備軍の総数は全国で年間15名を超えない。
法科大学院の研究者教員は現在、全国で1100名程おり、再生産のためにはそれだけでも年間40名程の新人が誕生せねばならない。当然これ以外にも同数以上の法学部専任教員がおり、 その再生産まで含めれば、必要数は100名以上になるであろう。15名程度では、問題にならない。
このことは、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(平成21年4月17日)の基礎資料中に示された『今後、専任教員確保がより困難になると考えられる分野』として 77%の法科大学院が法律基本科目を挙げていることにも表れている。

このまま放置すれば、法科大学院制度を担う教員の再生産は難しく、それどころか日本の実定法学の教育・研究の全体が崩壊の危機に瀕することになる。
中央教育審議会法科大学院特別委員会『法科大学院教育の質の向上のための改善方策について(報告)』(平成21年4月17日)が特に「教員養成体制の構築」の一項目を設けて力説するとおり、 実定法学後継者(法科大学院教員)養成のための強力な全国的拠点を形成することは、法学の教育研究面のみならず日本の司法制度全体にとっての喫緊の課題である。
本事業は、これまで多数の研究者を生み出し全国の大学に供給してきた実績を持つ京都大学法学研究科が、全国に先駆けてその重責を担おうという試みである。


必要性・緊急性03

当初の予想と違って法科大学院修了者の中から博士後期課程への進学者が現れない主要原因は以下の3点にまとめられる。
第一は、高額な授業料を支払い、ようやく法科大学院を修了した者の選ぶ進路先として、博士後期課程進学のみが飛び抜けて生活面で不安定な点である。
第二は、現状の教育課程では、法科大学院で実務中心の教育を受けた者が、進学後に改めて専門的研究を開始し限られた所定期間内に博士論文完成にまで行き着くというプロセスが不透明であり、 選択のリスクが測れない点である。
そして第三は、学部卒業時に研究者を志望していた者達すらも、広大な範囲を対象にし、かつ、法実践を中心とするハードな法科大学院教育の中で、 学問研究から一時的に遠ざかってしまい、学問的関心の持続が困難であるという点である。

そこで、本事業では、以下の三つの新しい施策を組み合わせた実定法学後継者(法科大学院教員)養成の為の拠点を全国に先駆けて形成し、上記の3問題解決のための道筋を全国に提示しようとするものである。

  1. 実定法学研究に対して十分な意欲と能力を持つ法科大学院修了者に対して研究に専念できる環境を提供することにより、将来の学界を担うに相応しい優秀な人材が、 自身の研究遂行能力を高めるとともに、不安無しに進んで研究者コースを選択できるようにする。
    このため、図書等の学修・研究環境を整備する他、志望する専門科目の特性に応じた研究活動を自由な発想で行える経費を執行する。
  2. 博士後期3年の課程に、法科大学院修了者(研究型修士課程を経なかった進学者や編入学者)を念頭においた論文作成能力 および外国語能力・外国法研究能力の向上を支援する講義群を展開すると共に、博士号取得者達による博士論文完成に向けての個別指導体制を作る。
  3. 法科大学院の教育課程の中に、研究者を志望する者のための科目群(理論研究演習、外国語文献読解演習、リサーチペーパー執筆指導)を展開する。


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